ACT REPORT(長め)|Inter-View 〜お互いの風景を眺める

同じ風景を見ながら話すということ

今年度の新作ACTです。

1年生の「対話ってなんだろう」というアクティビティでは、「私たちは対話という場面で、話をする側/聴く側と考える際、話をする側に主導権があると考えがち。しかし本当は逆で、対話では聞く側の態度によって、その場の質は決まる」ということを、失敗のロールプレイを通じて楽しく体験しました。


今回は実践編。

ただし、対面で話すのではなく、隣りあって座り、相手の顔ではなく、同じ風景を見ながら相手の話を聴いていきます。

タイトルのInter-viewはインタビューの言い換え。

語源的に「inter」は「互いに」「相互に」という意味の接頭語。「view」は「見る」「眺める」の意味をもつ動詞、また名詞としては「風景」「光景」などの意味をもつ。この2つが合わさったのが「interview」。これは「互いに見る」の意味から「面接」や「対談」になり、取材で人に会って話しを聞くことも意味するようになりました。


このアクティビティはインタビューのワークショップ。

語源的(あるいは造語的)な意味で「Inter-view=お互いの風景を眺め合う」時間としたいと思います。


ここでの「インター・ビュー」では、目の前の空間に二人で絵を描くようにお互いの風景を眺めあう時間。

話し手となった時に、緩やかにでも「いまの自分」を話せること。

聞き手となった時に、「いまの相手」が浮かび上がってくるような聞き方ができること。

さらに聞き手は「自分の話」をせずに「相手の話」に共感しようとすること。以上を目標としました。

テーマは「最近、思っていることを1つ 」という自由度の高いものとしましたが、いくつかのルールをつくりました。


ルール
① 必ず隣に座って話を聞くこと
② 相手が話しやすい雰囲気をつくること
③ 「自分のこと」は話さずに、相手に感想を伝えること
④ 時間までに教室に帰って来れば、学校内のどこで話してもOK


また、インタビューの内容は提出しないことにしましたた。

「いまだから、あなただから、話せたこと」っていうこともあるだろうから。逆に言えば、そこまでしっかりと話ができれば、それでいいのです。それとは別に、いつもように「この時間に対する感想」は書いてもらいました。


余談ですが、向き合って話す(対話)とは、自分の思いを伝えつつ、それへの反応としての相手の表情や仕草を観察し、あるいは相手の持つ背景を見透かそうとしながら、相手の内の答えや思いを探し合っている状態です。

転じて「腹の探り合い」なんていう言葉は、対話形式だから可能だとも云えるでしょう。私たちの仕事に置き換えても、ステークホルダー(利害関係者)との交渉や折衝の場面で隣に座って話すことはほとんどありませよね。「利害の均衡をとる=合意形成」には不向きな話し方なのだでしょう。

さて、生徒たちはどんな感想をもったでしょうか。

生徒の感想から

「対面でなく、横に並んでいるからこその話しやすさがあると感じた。別の友達ともやってみたい。」


「人と話すことが苦手な私でも、この方法だと落ち着いて話すことができそうだなと思った。周り人がいて、周りの人たちも同じように話しているということもポイントだと思う。聞くことに迷ったこともあったので、人と話すときは意識して話したい。」


「内野さんが言った『今だから、あなただから、話せたこともあるでしょう』、まさにこの通りでした。他の人には聞きにくい、これからの自分が成長していくにあたって大事そうだと思うところを相談させてもらいました。また、笑い合って楽しんで話ができたのが良かったです。」


「普段から話している友達だけど、今回みたいな方法でちゃんと聞くと、いつもこんなことを思っていたんだ!とか、意外なことが初めて知れて面白かった。何気ない会話だけど、相手の気持ちを深く知ることができたし、仲を深めることもできて良かった。」


「話す時に相手が真正面にいないから、その人の顔を見ないでしゃべれるから、緊張しなくて話が進んだ。」


「今回は正直、あまり話したことがない子だったので、初めて知った情報がけっこうあってすごく楽しかった。あとコミュ力が上がった気がする。人の話を聞くのは好きって思った!人の意外な好き嫌いを知れるのは面白い。」


「お互いで話してみたけど、自分のコミュ力がなくてあまり話せなくてやばかったけど、ふだんあまり話していない人と話して楽しかったし、これかたも話したいと思いました。」


「Aは保育園から一緒だから自分が言いたいことや知って欲しいことを伝えやすかった。幼馴染だからこそ分かる話題でとても盛り上がりました。大きくなるにつれて異性と話さなくなることが多いと思います。だけどAとはずっと何も気にせずに話せました。また機会があればやりたいです。」


「話をしていて仲が良いからこそ話せたし、二人きりだから話したかったことを話せて良かったです。素敵な機会だなぁ、いいなぁと思いました。今日の1時間、ありがとうございました。」


「同じ環境にいたとしても思うことは違うということが面白いと思いました。」


「二人だから話せることが話せて良かったなと思います。ふだんみんなで話せないことなども、二人だから話せたと思います。共感できることもたくさんあったので楽しかったです。」


「こういう時間だから話せることを聞いてもらって少しスッキリしたから良かったです。」


「風が涼しかった。気持ちよかったです。」


「環境によって人の感性は違っていておもしろいと思いました。」


「仲が良い友達とは話さないような内容のことを、この機会を通してインタビュー形式で相手の話をゆっくり聞くことができた。」


「人にはいろんな悩みがあるんだなと思いました。いつもとはまた違った感じの対話で少し変な感じがしたけど、気軽に言えたので楽しかったです。」


「クラスのみんながいろんなところにいて面白かった。重い話になるかと思ったけど、そうはならなかったので良かった。」


「相手は僕に対して嘘を言わず、本当のことを話してくれた。それは自分を信用してくれているからだと思い、嬉しくなった。」


「相手がどれだけ好きな人を愛しているのかがよく伝わってきました。」


「相手があまり話したことがなくても、頷いてくれたり、『うん、うん』と相槌を打ってくれたり、目を合わせてくれたり。最初は話にくいイメージがあったけど、すごく話が弾んで楽しかった。意外と話してみたらイメージが変わることも体感できたと同時に、目を合わせる、反応することはこんなに相手にとって話しやすいんだ、と気づけて良い経験になった。最後に教室に戻る時に『自分が質問しすぎてBの聞きたかったことを聞く時間がなくなっちゃってごめんね』と言ったら『話しかけてくれたから良かった』と返してくれてすごく良い気分になれた。なので、今日は人とのコミュニケーションの大切さに気づけて、すごく大事な時間になったと思う。」


「普段は横に座って話す機会が少ないから変な感じがしました。横で話すと顔もあまり見えないし、アイコンタクトができないので気持ちを伝え合うことがすごく大変でした。前に座って話した方が気持ちを伝え合うにはいいと思いました(※今回の主旨が伝わっていなかった例。次回、導入時にはさらに丁寧な説明を行う)」


「今日はペアの人といろんな話ができました。そして相手の新しい一面や、知っていたことでもより深く知ることができました。でもテーマを決めずにもっと色々なことを話したかったです。自分も相手も話したり聞いたりすることで話しやすくなったので楽しかったです。自分が話している時にいろいろ聞いてくれて、相手が話している時にしっかり聞くことができました。」


「話すことは難しいなと感じました。話したいことがたくさんあっても、どれから話そうか迷ったり、少しでも沈黙の時間があると、また話題を出すのに勇気がいるから大変でした。普段からなの良い人だと共通の話題があるからすごく盛り上がることができるけど、あまり話さない人は会話だけで盛り上がる方法が知りたいと思いました。自分はおもしろい話題を持っていないから、話し手になるのは下手だと思います。でも、人の話を聞くのはとても好きだから、自分は聞き手の方が向いていると気づくことができました。」


「話し手として感じたことや気づいたことは、新たな人と仲良く話すことができたし、聞き手として相手の色々なことが知れたこと。私たちは『夏に行きたいところ』というテーマで話して、夏が好きだからいろいろなことが話せて、聞けてよかった。」


「Cくんは面白いです。達観しているというか、価値観や思考がすごい!話すことよりも聞くことの方が得意なのであまり話すことはしなかったけど、人の深いところまで探れるっていうのは貴重な体験だと思った。とても面白かったです。」


「話を聞くことで、その人の人柄がよく理解できた。」


「聞いてみたいことや気になることをたくさん聞いて、相手の新たな一面を知ることができたし、色々な話で盛り上がってすごく楽しかった。対面で話すよりも隣に並んで話す方が楽に話すことができた。話しているうちにどんどん話したいことが浮かんできた。時間を忘れて話すことができて、いい機会だった。」


「今まであまり話したことがない人とペアだったけど、お互いが『話し手』『聞き手』としてしっかり機能できたからか、ちゃんとお話をすることができました。とても楽しいACTでした。」

などなど。


以上のことから、このアクティビティは生徒の対人関係の形成に一定の効果があると感じました。また、日常の生徒指導のなかで取り入れることも有用だとも感えます。

一方で、暑い日だったため、図書室が溜まり場になってしまったので笑、そこは一考の余地ありかとも思いました。

まなびとくらし

まなびとくらしは、様々なアート体験を通じて、子どもの「いきていくチカラ」を育むNPO法人です。

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